LINEはなぜ海外でブレイクしないのか? 突然の上場見送りに見る”不可解”


LINEはなぜ海外でブレイクしないのか? 突然の上場見送りに見る”不可解”

東洋経済オンライン
今は出資を受けるつもりはない」と憶測を打ち消したLINEの森川社長(撮影:尾形文繁)© 東洋経済オンライン 今は出資を受けるつもりはない」と憶測を打ち消したLINEの森川社長(撮影:尾形文繁) 「上場よりも事業を安定的に伸ばし、収益につなげるのが先決だ」──。

10月9日に開催された事業戦略発表会。LINEの森川亮社長は年内の上場を見送った理由をこう説明した。LINEは11月にも、日米で株式公開するとみられていた。上場で得る資金を広告宣伝などに投じ、海外での利用者獲得を加速するためだ。だが9月22日、親会社の韓国ネイバーが年内上場の見送りを打ち出した。

突然の翻意について森川社長から、納得いく説明がされたとは言いがたい。うわさされるIT大手とのM&Aも「今は出資を受け入れるつもりはない」(森川社長)と否定。真相はやぶの中だ。

ここまで順調に飛躍し、まさに今が“旬”のLINE。しかしその収益構造を見るかぎり、ゲーム依存からの脱却はなかなか進んでいない。

2013年12月期、LINE事業の売上高343億円の約6割を占めたのが、『LINE POP』などスマートフォン用ゲームの課金収入だった。ただ「スマホゲーム市場の伸びは鈍化している。株式市場で評価されるにはゲーム以外の収益柱が必要」(クレディ・スイス証券の中安祐貴アナリスト)。

事業戦略発表会でも、まるでゲーム依存への対策を打ち出すかのように、「LIFE(ライフ)」をテーマにした多数の新サービスを発表した。スマホの世界とリアルの世界を結び付ける、生活密着型サービスが中心だ。

目玉は今冬開始する決済サービス「LINE Pay」。LINEアプリとクレジットカードや銀行口座を連携させ、ネットや実店舗で支払いができる。出澤剛COOは「電子マネーは相次ぐ参入で市場が動き、大きなチャンスがある」と期待する。ほかにも、米フェイスブックのような公開型のSNS(交流サイト)機能や音楽配信、地図アプリを年内に始める予定。主力のメール機能から進化し“生活インフラ”になれれば、収益基盤は大きく広がるというわけである。

ただしこれらのサービスはほぼ国内限定で、提携するのもほぼ国内企業。国内向けに新事業を“乱発”するが、今後の成長機会を考えると、出遅れがより目立つのは海外展開のほうだ。

LINEが従来開示してきのは登録者数のみ。今回初めて、実際に使っている月間利用者(アクティブユーザー)数を公表したが、その数は1億7000万人。登録者5億6000万人との差は大きい。フェイスブック傘下の米国「ワッツアップ」の6億人、中国テンセントの「微信」の4億3820万人と比べ、かなり水をあけられた。

森川社長は「LINEの月間利用者数が少ないとは思っていない。今後は東南アジアのみならず欧州、北米でも伸ばしたい」と力を込める。

が、環境は甘くない。強敵ワッツアップを前に苦戦する米国では、現地上場で知名度向上を狙う作戦がお預けになった。微信が支配する中国では、政府のネット接続制限で7月からLINEが使えず、思わぬ足止めを食らう。世界の競合アプリと伍して闘うには、自社単独では限界が見えてきたのかもしれない。

(週刊東洋経済10月25日号(10月20日発売)「核心リポート04」を転載)

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